「高金利通貨を買って持っていればスワップがもらえる」。FXで最も古く、最も広く信じられている考え方です。これを8通貨・16年・月次リバランスのポートフォリオとして検証しました。利益は出ました。それでも採用していません。
検証した形
毎月初に8通貨(米ドル・ユーロ・円・英ポンド・豪ドル・NZドル・カナダドル・スイスフラン)を政策金利の高い順に並べ、上位2通貨を買い、下位2通貨を売ります。中央銀行の政策金利は公式統計から取り、リバランス日の前日までに公表済みの金利だけを使います。検証する組み合わせは事前に3つだけと決めました(上位下位を1・2・3通貨ずつ取る形。主役は2通貨)。組み合わせを増やせば増やすほど「偶然よく見えるもの」が混ざるからです。
結果
16年・193回のリバランスで +82.0% (年率 +5.12%)。売買コストは -0.25% しかかかりません(月1回しか動かさないため)。
| 内訳 | 金額(元本比) | 意味 |
|---|---|---|
| 金利からの取り分 | +44.6% | 高金利通貨を持ったことでもらえた分 |
| 為替レートの変動 | +37.6% | 通貨自体が上がった/下がった分 |
| 売買コスト | -0.25% | 月1回のリバランスで払った分 |
★内訳が重要です
利益の内訳を分解すると、金利からの取り分が +44.6% で単体でプラスでした。つまり「高金利通貨を持つと金利差がもらえる」という機序そのものは、この16年・この8通貨で実在します。当サイトの他の検証(テクニカル指標の組み合わせなど)では「コストを引く前の期待値がそもそもゼロ」でしたが、これは質が違います。
| 年 | 損益 |
|---|---|
| 2010 | +14.4% |
| 2011 | +11.0% |
| 2012 | +12.7% |
| 2013 | +3.9% |
| 2014 | +8.7% |
| 2015 | -7.8% |
| 2016 | +8.7% |
| 2017 | +4.2% |
| 2018 | -2.4% |
| 2019 | +2.3% |
| 2020 | +4.6% |
| 2021 | +5.8% |
| 2022 | -2.1% |
| 2023 | +4.7% |
| 2024 | +9.1% |
| 2025 | +1.3% |
| 2026 | +2.9% |
それでも採用しなかった3つの理由
1. 通貨の並びをでたらめにしても同じくらい儲かる。 8通貨のラベルをランダムに入れ替えて何百回も試したところ、上位5%の成績は本物の戦略を上回りました。この時代はドル高・円安が続いたので、でたらめな並びでも「たまたま正しい側」に落ちやすかったのです。金利で並べたことに意味があったと言い切れません。
2. 「誰でも知っている序列」に負ける。 全期間ずっと豪ドル・NZドルを買い、円・スイスフランを売り続けるだけの固定戦略のほうが、毎月ランクを組み替えるより成績が良くなりました。毎月の順位入れ替えは何も足していないということです(ただしこの固定の並びも、結果を見てから選んだものなので、それを採用することもできません)。
3. スワップの上乗せに食われる。 この戦略の利益はスワップとして受け取りますが、実際の口座で受け取るスワップは、銀行間の金利差から業者の上乗せを引かれた額です。計算すると、年 2.56% を超える上乗せを払うと利益が消えます。両建てで両方の通貨に上乗せがかかることを考えると、これは余裕のある水準ではありません。
開示しておくこと
検証期間は2010年から2026年で、2008年に起きたキャリー取引の暴落を含んでいません。この戦略は「階段を上ってエレベーターで落ちる」形の損益分布で知られており、暴落を1回も経験していない期間の成績である点は、割り引いて読む必要があります。また好成績だった時期は日米の金利差が歴史的な極値にあった局面で、金利がどこも同じように低かった2010年代前半はほとんど機能していません。
この結果の読み方
「金利差で儲かる」は間違いではありません。ただし、それはすでに市場が知っていることで、あなたが受け取る前に業者の上乗せがかなりの部分を持っていきます。当サイトの判定基準では、機序が実在することと、口座で再現できることは別問題として扱います。
検証の生データについて
本文の表は 3 構成の集計です。集計前の構成単位の生データ(CSV)と、検証プログラムの設計メモも配布しています。結論・全構成の成績・合格基準・不合格の理由は、すべてこのページで公開しています。 都合の悪い結果を限定側に隠してはいません。当サイト経由で口座を開設された方にお渡ししています(口座番号の照合のみ・メールアドレス不要)。
→ 受け取り方を見る
本記事は当サイトが自ら実行した検証の記録です。特定の個人・団体・サービスを評価したものではありません。掲載した数値はすべて過去データに対するシミュレーションであり、将来の結果を示すものではありません。取引には元本を超える損失が生じる可能性があります。投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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